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ル・ジェ
蓋の所クリックで餌があげられる。
7-273-237
(C)GUST CO.,LTD.
開口一番の素っ頓狂な叫び声は予想してなかったらしい。
意外そうな顔をして運び屋がこちらを見る。
「何って…お前が頼んでいた生き物だが…」
「それは分かるけど!」
「じゃあなんだ」
「な……なんか凄く、おっきく ない…?」
「……確かに」
人を1,2人は乗せても大丈夫そうな頑丈そうな体格。
毛に覆われた顔は実際可愛いのか怖いのかいまいち判断が付けにくい。
もっさり。のっそり。
そんな印象を受ける…とりあえず今まで見たことの無い生き物だった。
ともかく、でかい。
「見た目は確かに驚くかもしれないが運搬系に特化した大型獣類でな、山岳地帯でも何処でも働く頼もしい生き物だ。記憶力もいいから乗り物にはいいし、多少だがミルクなどの副産物も取れる。生き物としては大変いいものだとおもうぞ」
「…暴れたりしない?噛まない?」
「………まさかお前、怖いのか…?」
「う゛っ…い、いや大きいのが実は怖いとかないよ!食べられそうになったとかそんなこと…た、ただいつも小さい子ばっかりだったから驚いただけだよ…!!」
「………」
++++
何か言いたげな顔をしている仕入れ屋をさっさと追い出した後、なんとか恐る恐る近づいて撫でてみる。
もっさりしている毛は意外と柔らかくてなでると気持ちいい。生き物も気持ちいいのか少し擦り寄ってきた。
…案外可愛いかもしれない。
きっと大丈夫、そう暗示をかけながら大事なことを思い出してハッと固る。
「…この子、何処においておけばいいんだ…!!?」
明らかに店内に入りきらない立派な体格をみて、ちょっぴり気が遠くなった。
「……。」
先程仕入れ屋から受け取ったものを、壊さないようにそっと持ち上げる。
卵形のガラスの中央には淡い光を放つ宝石のようなものが一粒、ゆったりと浮き沈みを繰り返しているのが見えた。
一見すれば美しい美術品の1つのように見える『それ』。
いつもなら喜ぶべき代物だが、淡い光の本当の意味を知った今は…
+++
―『嘆きの妖精樹』、と呼ばれる木が存在する。
そこには無念の思いを残した妖精達の魂が宿るといわれている…
魂は実のように樹に宿り時を待ち…
樹は次の生に還る時までその魂を守り、癒す役割を持つ。
しかしいくら妖精樹とは言え、終わりは来るもの。
仕入れ屋が出会った妖精樹も寿命だったらしい。
寿命が来ると、本来ならば魂の想いが解放されるまで守り続けるという役割がもう出来なくなってしまう。
ただしそうなると…残された魂達はいずれ消滅するしかない運命。
それならばせめて、『外の世界を見てみたい』という妖精達の最後の願いを叶えてやりたい…そう樹は語った。
仕入れ屋はその思いを汲んだ。
羊水の様な液体で満たし、せめて長く時を過ごせる様に。
卵形の容器で最後に優しく包まれるような満たされた気持ちになれるように…
+++
…そんな思いを込められたものが今、俺の目の前にある。
『…お前なら適任だと思ってな。…頼むぞ』
去る間際の仕入れ屋の一言が蘇る。
短いながらも思いの篭った一言。信頼、されているのだろうか。
それならば…
よし!としんみりとした空気を払うように自分の頬を軽く叩いてから、卵を壊れないように優しく持ち上げる。
「…あとどれくらい、もつのか分からない…けれど。……どうか様々な世界を見ることが出来ますように」
そういって、小さな魂達の為に小さく祈ったのだった。
外に、世界に旅立ってから初めて寄った場所が丁度茶園で、そこで本当のお茶って言われてるものを見るまでこれを飲み続けていたという。
健康には良いものだったから、最初は治療の一環で飲まされて、その内に慣れた訳だけれども…
今考えると非常に恐ろしい話だ。
これはお茶じゃなく薬湯。
本当に森に生えてる野生の薬草だから、味の保障も何もあったもんではない。
良く飲めたな、俺…
一般的に(無謀な挑戦をする人以外は)風呂につけて使うのが基本だが、久々に目にしたそれをお茶にしてみようかと無謀な事を考える。
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数刻後…
水につけただけですぐに効果を発するそれは、壮絶な匂いを部屋中に撒き散らし始め…
強烈な匂いに動物達が部屋から逃げ出す中、1人ポツリと、しかしはっきり呟いた。
「あぁ…懐かしいなこの匂い…………やっぱり飲みたいとは到底思えない」
―手に取った時、それは不思議な声を放った。
…その時はびっくりしたけれど、実際はそれだけで。
別に熱くなったり冷たくなったり割れたりなんてことは無かったので、拾ってすぐに捨ててしまった。
どうやら、持つにふさわしいものが持てば願いをかなえてもらえる不思議なものだったらしい、ことを後から聞いた。
じゃあ俺は願いを、そこまで欲してはいなかったのかな…と、思う。
あの時願っていた事は何だっただろうか。
そして今再び目の前にそれはある。
とても綺麗な、宝石のように輝く『それ』。
初めて見た時は唯の綺麗な小石だった。