ある日の仕入れ屋。

手に重ねられていくのは、いくつもの細かい指示の入ったメモ。
一枚増やされていく度、こめかみがピリピリしてくる。
それを分かっているのかいないのか、メモは増える一方。

「…おい」
「あ、そうそう…これも頼んでおこう…数が少ないから余分に…っと」

ぴり。
「おい、動物馬鹿」
「ん、何？あ、ついでに手紙もお願いできるかな？向こうに中々会えない友人がいてね…」

ぴりぴり…
「～っ…！待て、話を…」
「お茶も美味しいし、きっと気に入ると思うよ！あ、ちなみに石はこっちじゃ手に入らなくてね…あの森の…」

ぶちん。
「……っ、いい加減にしろーーーーーっ！！！」
「おわっ！？」

「お前な、いくらなんでも頼みすぎだ！！こんだけの量の注文のほかに…手紙やら指定やらたっくさん押し付けやがって…！！俺は仕入れ屋であって運び屋や何でも屋じゃないっ」
「えぇー…だって頼めるのザークくらいしかいないし…ちゃんと全部やってくれるんだもん。さすが仕入れ屋」

凄いね、とニッコリと返す笑みには、残念ながら純真の欠片も見当たらない。
このやろう、と口からつい漏れそうになった。

「…今のは、褒め言葉として受け取っておこう…が、やらんもんはやらん」
「ちぇーっ、しょうがない。それじゃあ頼んだものだけでいいよ3日後までによろしくねーっ」
「は」

…今のは幻聴だろうか。

「おい…今3日、といったか…？」
「うん、だって今度の新商品に使うから。だから3日…Σぅあ痛っ！！？」
「そんな短期間で集めさせる上についでまで頼もうとしたのか……ふざけるんじゃないっ！！！」
「Σちょっ、痛いってばっ！！」
「今回ばかりは許さん！！」
そう叫ぶとともに、3度目の拳を振り下ろしたのだった。

―それから2日後。
見事に揃えてきた仕入れ屋にまた殴られる店長の姿が目撃されたとかなんとか。