無題

―それが憎しみを持つものならば　黒く渦巻く闇の化身
―それが信じるのみならば　眩しくて見えない強い光
―それが人の痛みを知らぬのならば　愚かな道化師となりえる
―それが人を救う事が出来るのならば　人を傷つける事も容易い

白には黒があり、光には闇がある。
常に表には裏が存在し、裏には表が存在する。
どちらが最初かなんて、鶏が先か卵が先かと同じ事。

人の心は常に真実と矛盾を孕んでいる。

醜くて美しく、儚くて強い存在。
唯一の色に染まるよりも、混ざり合わない色が同居しているほうが何よりも面白い。
だからこそ、人を見るのはやめられないんだ。

それが嫌いであれ、好きであれ好奇心に勝るものはない。

―。

見えないけど、確かにあるもの。
触れられるけど、それは手ではつかめない。
存在があることは分かるけど、目で捉えられるものでもない。
タイミング、時間、雰囲気、感情、相手の思ってること、真意…
だからこそ、難しい。

何時でも誰かが。

いつでも誰かがきっと
そばにいる
思い出しておくれ
すてきなその名を

夢でつかんでいたものは。

走って走って、懸命に走って…
『それ』を手にした瞬間に。


―目が覚めた。

あぁ…、と納得と共に深いため息まで出してしまった。

少しリアルだったので、本当にそれを持っていないか自分の手を開いて確認してみる。
…やっぱりないよな。

…夢でつかんだものは…そうだね、意外と簡単に手にはいるのかもしれない。
頑張ればの話ではあるけれど。

でも、『それ』が象徴しているものを、自分が納得いくものをつかむのは…案外難しいものなんだろう。

強く思うことが夢にでるというのは良くあるけど、こうゆう何かを暗示させる夢を見たのは久々だった。
でもお陰で自分が今何を考えているのかわかった。

とても簡単なこと。
そして俺のワガママ。

…ただ唯一の願いだった。

***

―気付いてしまった。